ガールズバーで働く私にできること
こんにちは。
知沙都(ちさと)です。
水商売というと、それだけでいかがわしい雰囲気を想像する人も少なくないのかもしれません。
お店にやってくるお客様の目的は千差万別。
女の子とイチャイチャしたい!という人もいれば、単に飲み放題なので居酒屋より安く済むという理由で来ている人もいます。
キャストが嫌がることをしたり、他のお客様に迷惑をかけたりしなければ、どんな理由で来てくださっても構いません。
(イチャイチャといっても、ガールズバーではせいぜい手を握るくらいかな?)
しかし、相手が異性であるかどうかはあまり重要ではなく、誰かと一緒にお酒を飲みたいとか、話を聞いてもらいたい時というのが誰しもあるのだと思います。
私が働いていたガールズバーはRed Moon Bar(レッドムーンバー)といい、お客様や店員は「レッド」と呼んでいます。
レッドで私が働き始めるよりも古くからの常連さんで、「田部ちゃん」と「やっしー」いうお客様がいました。
2人は幼馴染の地元民。
高校か大学からは別々で、もちろん勤めている会社も違いますが、1~2週間に1度は一緒に飲んでいる仲良しさん。
レッドに2人で来ることもあれば、1人だけ来ることも。
私は2人と同い年だったので、とても良くしてもらいました。
今回は、田部ちゃんのお話。
田部ちゃんは結婚していましたが、飲み歩くのも女の子がいるお店も大好き。
また、仕事のイライラを家に持ち込みたくない、というタイプでもありました。
ある夜、私が昼職(掛け持ちしている昼間の仕事)を終えて出勤する途中、田部ちゃんから「今日いる?」とLINEが。
「22時からいるよ」と返事をし、私が出勤してからしばらくすると田部ちゃんが1人でやってきました。
すでにだいぶ飲んでいる様子の田部ちゃん。
(酔ってもそんなに変わらない人ですが)
「ハイボール、と、水ももらっていい? あ、ちさとさんも1杯どうぞ」
2人分のドリンクを作り、カチン、とグラスを合わせて乾杯すると、
「もう、さー・・・」
と、ため息混じりに田部ちゃんが話し始めました。
田部ちゃんのお仕事は営業さん。
話によると、田部ちゃんが取ってきた契約に対し、上司から心無い言葉を吐かれたのだそうです。
今夜はそれに腹が立って仕方がなくて、他のところでも飲んでたけどいまだにイライラが収まらないから来た、と。
それだけで、私にとっては嬉しいですよ。
そんな夜の話し相手に私を選んでくれたんですもの。
先述の通り、田部ちゃんは女の子のいるお店が好きで、ガールズバーもたくさん知っています。
レッドの近隣にも4軒ほど他のガールズバーがありましたし。
「『たった90万』って。何だと思ってるんだろ」
確かにもっと大きい契約も全然ありうる業界だけど、と、田部ちゃんは悔しげに言います。
こういうとき、私には相づちを打ったり、「ひどい言葉だね」とか「大変だね」とか共感を示すことしかできません。
田部ちゃんの会社が扱っている商品は知っていたけれども、業界の事情に詳しいわけではないし、そもそもアドバイスを求めて田部ちゃんがここに来ているわけでもないし。
田部ちゃんとやっしーは平日に来ることがほとんどで、この日も平日でした。
明日は当然朝から普通に仕事。
あまり遅くなっても良くないけど、できるだけモヤモヤを吐き出してもらえれば。
そう思いながら田部ちゃんの話を聞いていました。
この日の田部ちゃんはカッコ良かったです。
愚痴といえば愚痴だけど、自分の仕事を馬鹿にされたから怒っていた。
誇りを持って働いているからこそ、自分にプライドがあるからこそ、上司の何気ない一言に憤りを覚えたわけで。
普段からグチグチ言っている人ではないので、今日はよほど腹が立っているんだなと感じました。
水商売をやっていると、いろいろな人から仕事のお話を聞かせてもらえるし、生き様を学ぶこともできる。
それが水商売の大きな魅力の一つだと思っています。
もちろん、お金をいただいてサービスするのはこちら側なので、「お話聞かせてください☆」だけではダメですけどね。
田部ちゃんは1時間半ほど飲んで帰っていきました。
いつも席を立つときに「ありがとう、楽しかったよ」と言ってくれる優しい田部ちゃん。
私と話したことで少しでも心が軽くなっていたらいいな、と思いながら、見送ったのでした。
田部ちゃんは、私にとって最も信頼できるお客様の一人でした。
お店を辞めることになったときも話を聞いてもらいましたし、今でもたま~に連絡しています。
今後もいくつかエピソードを書かせていただく予定です。
もちろん相方やっしーの話も。
*人物名、店名は実際とは異なります*